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【コン検通信 理事だより】先の見えない時代の「働き甲斐」と「最高のCX」両立に必要なこと

■ご挨拶
みなさまはじめまして。本年より理事に就任いたしましたプロシードの野村と申します。私自身、20代前半にアルバイトでこの業界(仕事)に携わってから早20数年。様々な業種業態、様々な立場で業界に関わらせていただきました。これからはコン検を通じて業界をさらに発展させ、みなさまとみなさまのお客さまの「満足度向上」に貢献できるよう努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

■先の見えない時代とコンタクトセンター
現代社会は、テクノロジーの急速な進化、グローバル経済の変動、予期せぬパンデミックや自然災害など、かつてないほど「先の見えない時代」に突入しています。(VUCAの時代などとも言われますね)このような不確実性の高い状況において、企業は常に変化への適応を求められています。
中でも、顧客接点の最前線であるコンタクトセンターは、この影響を最もダイレクトに受ける部門の一つです。顧客からの問い合わせ内容は複雑化し、多様なチャネルからのアクセスが増加。さらに、AIやRPAといった新技術の導入も進み、オペレーターの業務内容は大きく変容しています。

■教育の目的とゴールの変化と5つの重要要素
このような環境変化に伴い、コンタクトセンターにおける教育の目的とゴールも大きく変化しています。従来の教育は、オペレーターが正確な情報を提供し、効率的に業務を遂行できるよう、知識とスキルの習得に重点が置かれていました。しかし、これからの時代においては、それだけでは不十分です。
「先の見えない時代」においては、定型的な業務はAIやRPAに代替される可能性が高まります。そのため、オペレーターに求められるのは、より高度な問題解決能力、共感力、そして柔軟な思考力といった「人間ならではの能力」です。
言い換えると教育の目的は、単に「業務をこなせる人材」を育成することから、「変化に対応し、自ら考え、行動できる人材」を育成することへとシフトしています。ゴールは、顧客の潜在的なニーズを引き出し、期待を超える価値を提供できるプロフェッショナル集団を形成することです。これにより、オペレーターは自身の成長を実感し、「働きがい」を感じることができるようになります。

具体的な教育内容としては、以下の5つの要素が重要になります。

①課題解決能力の向上: 顧客の真の課題を見抜き、最適な解決策を提案する思考力を養う。

②共感力と傾聴力の強化: 顧客の感情に寄り添い、信頼関係を築くコミュニケーション能力を高める。

③柔軟な思考と適応力: マニュアル通りではない、イレギュラーな状況にも対応できる判断力を育む。

④デジタルリテラシーの習得: 新しいテクノロジーを積極的に活用し、業務効率化や顧客体験向上に繋げる知識を身につける。 

⑤セルフマネジメント能力の育成: 不確実な状況下でも自身のストレスを管理し、高いパフォーマンスを維持する力を養う。

これらの能力開発は、単なる座学だけでなく、ロールプレイングやOJT、ケーススタディなどを通じて実践的に行われるべきです。また、個々のオペレーターの成長段階や特性に合わせたパーソナライズされた教育プログラムが求められます。

■「不安」を「働き甲斐」へ変えていくために必要な6つの重視すべきポイント
「先の見えない時代」は、従業員にとって「不安」を伴うものです。自身のスキルが陳腐化するのではないか、AIに仕事が奪われるのではないか、といった漠然とした不安は、モチベーションの低下や離職に繋がりかねません。この「不安」を「働きがい」へと転換するためには、企業は以下の6つの点を重視する必要があります。

①明確なビジョンと方向性の提示:
企業としてどのような未来を目指し、その中でコンタクトセンターがどのような役割を担うのかを明確に伝えることが重要です。漠然とした不安を払拭し、自身の仕事が企業の成長に貢献しているという実感を持つことで、従業員は安心して業務に取り組むことができます。

②成長機会の提供とキャリアパスの提示:
新しい技術や知識の習得を支援し、継続的な学習機会を提供することで、従業員は自身のスキルアップに繋がるという手応えを感じられます。また、コンタクトセンター内でのキャリアパスや、他部署への異動の可能性など、具体的なキャリアプランを示すことで、将来への希望を持つことができます。これにより、自身の成長が組織の成長に繋がるという「働きがい」が生まれます。

③エンパワーメントと自律性の尊重:
オペレーターが単なる指示された業務をこなすだけでなく、自身の判断で顧客の問題解決に貢献できる権限を与えることが重要です。これにより、責任感と達成感が醸成され、「顧客のために役立っている」という実感が「働きがい」へと直結します。また、業務改善提案の機会を設け、積極的に意見を取り入れることで、従業員の主体性を尊重し、モチベーション向上に繋げます。

④公正な評価とフィードバック:
単なる成果だけでなく、プロセスや努力も評価の対象とすることで、従業員は自身の貢献が正当に評価されていると感じることができます。また、定期的なフィードバックを通じて、強みと改善点を明確に伝え、成長を支援することが重要です。

⑤心理的安全性の確保:
失敗を恐れずに意見を述べたり、新しいことに挑戦したりできるような心理的に安全な職場環境を構築することが不可欠です。上司や同僚からのサポート体制を強化し、困った時に相談しやすい雰囲気を作ることで、従業員の不安を軽減し、前向きな姿勢を促します。

⑥テクノロジーとの共存:
AIやRPAなどのテクノロジーは、オペレーターの仕事を奪うものではなく、むしろ業務を効率化し、より創造的な業務に集中するためのツールであることを明確に伝える必要があります。新しいテクノロジーを積極的に活用するためのトレーニングを提供し、その恩恵を従業員が実感できるようにすることで、テクノロジーへの不安を解消し、むしろ自身の能力向上に繋がるものとして捉えることができます。

これらの取り組みを通じて、従業員は「先の見えない時代」においても自身の成長と貢献を実感し、高い「働きがい」を持って業務に取り組むことができるようになります。

■最高のCXを実現するために必要な6つの不可欠な要素
「働きがい」の高い従業員は、結果として「最高のCX(顧客体験)」を生み出します。従業員が満たされ、モチベーションが高ければ、顧客への対応も自然と丁寧になり、共感的なコミュニケーションが可能になるからです。

最高のCXを実現するためには、以下の6つの要素が不可欠です。

✓顧客理解の深化:
顧客のニーズ、期待、そして感情を深く理解することが出発点です。データ分析、顧客アンケート、VOC(顧客の声)分析などを通じて、顧客の「インサイト」を掘り起こし、サービス改善に活かす必要があります。

✓パーソナライズされた体験の提供:
顧客一人ひとりの状況や履歴に合わせた、パーソナルな対応が求められます。過去の問い合わせ履歴や購入履歴などを活用し、顧客が「自分を理解してくれている」と感じられるような対応を心がけることで、顧客満足度は飛躍的に向上します。

✓シームレスなオムニチャネル対応:
電話、メール、チャット、SNSなど、顧客が選択するあらゆるチャネルにおいて、一貫性のあるシームレスな体験を提供することが重要です。チャネルをまたがった情報連携を円滑に行い、顧客が何度も同じ説明をする手間を省くことで、ストレスフリーな顧客体験を実現します。

✓プロアクティブなアプローチ:
顧客が問い合わせる前に、潜在的な課題を予測し、解決策を提示するプロアクティブなアプローチも有効です。例えば、製品の不具合情報を事前にアナウンスしたり、利用状況に合わせて最適なプランを提案したりすることで、顧客は企業への信頼感を高めます。

✓迅速かつ的確な問題解決:
顧客の問い合わせに対して、迅速かつ的確な解決策を提供することは、CXの基本です。オペレーターの知識・スキル向上だけでなく、FAQシステムの充実、AIを活用した回答支援ツールなども効果的に活用することで、解決までの時間を短縮し、顧客の満足度を高めます。

✓フィードバックループの構築:
顧客からのフィードバックを積極的に収集し、サービス改善に繋げる仕組みを構築することが重要です。顧客の声は、企業の成長にとって最も貴重な情報源であり、これをPDCAサイクルに組み込むことで、継続的なCX向上を実現します。
繰り返しになりますが、「働きがい」のある従業員は、これらの要素を高いレベルで実践することができます。彼らは顧客の課題解決に真摯に向き合い、自ら考えて最善の解決策を模索し、時にはマニュアルを超えた提案を行うことで、顧客に感動を与えることができます。

いかがでしたでしょうか。
「先の見えない時代」において、「働きがい」と「最高のCX」は、企業の持続的な成長を支える両輪です。従業員の「不安」を「働きがい」へと変え、その「働きがい」が顧客に「最高のCX」として還元される好循環を生み出すことこそが、現代企業が最も注力すべき課題と言えるでしょう。

■課題解決に向けて
コン検では「最高のCX」を下支えするために必要なスキルを関係者が保有しているかを可視化するためのコンテンツを多数用意しています。
https://www.conken.org/about/

また、当社(プロシード)ではそのスキルを活かして“組織目標の達成”につなげるためのコンテンツとしてCOPC規格を活用したコンサルティング、トレーニングメニューをご用意しておりますのでぜひご活用ください!
https://proseed.co.jp/

<株式会社プロシード 野村 昇平>

 

■事務局から

野村理事のコン検無料Webセミナーを6月26日に予定しています。
お申し込みはこちらから>https://www.conken.org/information/cat/seminar2506.html