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【コン検通信 理事だより】 コンタクトセンターでのAI活用

1.コンタクトセンターでのAI活用

世界中のコンタクトセンター業界ではAIによる変革が起こり、従来の運営モデルや役割に革命をもたらしています。
AIはコンタクトセンターの広範囲な領域で活用されるようになり、顧客サービスを提供する方法が再定義され、AIが日常的な業務を担当する一方で人は感情的な側面や高度な問題解決スキルを必要とする複雑な問題を担当するようになってきています。
国内のコンタクトセンターでもAIの導入が進んでおり、センター業務のさまざまな領域で活用されています。

AIの活用領域を大きく分類すると、4つの領域に分類することができます。
その4分類とは、直接顧客と対応をする「フロントオフィス領域」、オペレータの業務を支援する「コパイロット領域」、センター運営を管理する「ミドルオフィス領域」、経営貢献やマーケッティングの活用を支援する「バックオフィス領域」に分けることができます。
以下に、4つの分類に沿って、国内センターの活用事例を紹介します。

(1)フロントオフィス領域
フロントオフィス領域は、AIが直接顧客との接点となる領域で、無人対応や自動化の領域になります。
例えば、多くの企業が導入しているAIチャットボットによる24時間365日のサービス提供は顧客対応が自動化され、定型的な問合せは直接AIで解決する事ができます。
また、ボイスボットが顧客対応の初期アプローチに利用され、AIを利用したIVR機能により、顧客がプッシュボタンでの選択をする方式から、顧客の問題を音声認識と生成AIで認識し、問題を解決できる適切なチームや担当者に転送する事例があります。
AIを利用した転送機能は、IVRで深い階層を利用していたセンターや問い合わせ先別に回線に分けていたセンターでは、顧客が自身で選択しなければならない手間を無くすことができ(エフォートレス化)、顧客体験に良い影響を与えます。

(2)コパイロット領域
コパイロット領域では、リアルタイムでのオペレータ支援機能など、オペレータの生産性や品質向上のためにAIを活用する領域です。
例えば、顧客とオペレータの会話をAIがリアルタイムで文字起こしすることで、会話内容をテキスト化したり要約化したりし、応対履歴として利用されています。
この機能により、従来は手入力していた応対記録をAIが処理するため、後処理時間(ACW)は大幅に短縮され、業務の効率化を図ることができます。
また、顧客とオペレータの会話の文脈から、AIはオペレータが回答のために必要な情報をリアルタイムで提供する機能(オペレータ支援)により、問題解決率(FCR)の向上や、会話時間(ATT)の削減となります。また、オペレータ支援機能は、オペレータの負担を軽減し、応対品質の向上を図ることができます。その結果、AIの活用により、業務効率化と顧客体験の向上となっています。

(3)ミドルオフィス領域
ミドルオフィス領域は、センター運用を管理する業務を支援したり、オペレータのトレーニングなど、SVの業務を効率化する領域です。
例えば、顧客とオペレータの会話のモニタリングについて、従来はSVがランダムに通話や録音データを抽出し評価していましたが、SVの業務が忙しいセンターではモニタリングのための時間がとれず、毎月一人あたり1本から3本程度の評価しか行っていないセンターもありました。
モニタリング業務をAIによる評価を活用することにより、コンプライアンス違反やソフトスキルなどの評価について全件評価を行うことができるようになります。
全件モニタリング評価し結果をオペレータにフィードバックすることは、数件しか評価していない評価結果より納得感があるため、オペレータの不満を解消する効果があります。
ただし、問題解決のための回答の正誤については、現状ではAIで評価することができないため、ミス率をKPIとして測定している場合には、SVによるモニタリングを無くすことができない点には注意する必要があります。
その他には、応対履歴のトレンドからAIがFAQの案を自動的に作成する機能により、FAQ作成の工数を大幅に削減することができます。
また、オペレータの育成にAIを活用するセンターもあります。
オペレータの育成では、AIを活用したロールプレイングやメールなどの文章作成もAIを活用し評価を行っているセンターもあります。また、短時間(5分~10分程度)の学習ビデオの教材をAIで作成し、マイクロラーニングを実施しているセンターもあります。

(4)バックオフィス領域
バックオフィス領域では、応対履歴からVOCについての分類やトレンド状況の分析を行い、企業の商品やサービスの開発や改善に利用する領域です。
応対履歴のデータや通話記録の分析にAIを活用し、顧客の潜在的な不満や要望を分析し、企業の商品やサービスに活用しているセンターもおおくあります。

上記で説明した通り、国内センターにおいてもAIの活用領域が年々拡大しています。

 

2.AI導入のポイント

センターへのAI導入は年々進んできていますが、導入に失敗するセンターも出ています。
導入の失敗では「AIの活用がうまくいっていない」という理由が多く、その原因は、AIの活用目的が明確になっていないことがほとんどです。成功しているセンターには以下のような特徴があります。

1.AIの導入目的が明確である

2.AIに関する知識や操作についての社員教育が定期的に実施されている
  また、AIに関する情報が全社員に共有されている

3.業務プロセスの再設計が行われている

4.ハルシネーションに対する設計が考慮されている

上記4点は「全社員がAIを活用できる組織」を目指しているセンターの特徴でも有ります。
特に、AIを業務でどのように活用できるかを考えるのは、現場で働いている社員が考えることが最も効果的であり、AIを業務で活用するためには、AIで何ができるかを理解している必要があります。

「現場の課題は何か」「AIをのどのプロセスで活用することができるのか」などは現場の社員がセンターの運用を一番理解しているため、現場が中心となり考えることが重要となります。
あるセンターでは、AIの教育でAIによるプログラム作成なども取り入れられ、Claude codeを利用した、シフトスケジュールのプログラムを作成し、現場で活用している事例もあります。

 

3.今後の展開

現在までは、コンタクトセンターの採用難に対する対策として、AIによる業務効率化やコスト削減を目的とした利用が主でしたが、2026年に入り、AIを活用したサービス提供により「顧客付加価値の提供」を考えるセンターが増えてきています。
あるセンターでは、AIによる効率化により余裕ができた分を、顧客対応に割り振り、応答率を向上させる取り組みをし、顧客体験の向上を目指したセンターもあります。
今後は、AIによる業務効率化やコスト削減という目的から、AIによる顧客付加価値の提供という目的にシフトさせていく必要があります。
AIの導入目的が「業務効率化」や「コスト削減」から「顧客付加価値の提供」へのシフトしている流れはは国内センターだけでなく、海外のセンターも同様な流れとなっています。

 

<グッドエンゲージメント 代表 田口 浩>