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[コン検通信 理事だより]ホンモノノチカラ

「朝早くから電話をかけてくる人がずいぶんたくさんいるんですね」

これは、研修の一環でコンタクトセンターを見学した新入社員の一言です。

今年度の新入社員研修では、約1ヶ月間の電話応対研修をコンタクトセンターが担当しました。全国の営業店に配属される新入社員へ、電話の取り次ぎや注文受注のロールプレイングを1人あたり約11時間行いました。受講生の中には固定電話を初めて触ったという人もいたそうです。まず初めに受話器を持ち上げて・・・というところからのスタートとなります。
自宅に電話がない家庭で育った場合はそうなりますよね。

固定電話がある家庭の場合でも、知らない人からの電話(ディスプレイに登録名が表示されていない電話)は出ないように言われて育ち、家族全員、電話が鳴っても出ないのは当たりまえ、留守番電話に切り替わるまでは誰も取らない、留守録が始まり、知り合いだと確認できた場合に限り母親が対応していたという話を聞きました。学生時代にアルバイトで電話を取ることだってあるのではないかと尋ねると、アルバイト先では店長や社員が取っていたといいます。
物心がついた頃には携帯電話が普及している時代に育っていることもあり、見ず知らずの人と電話をするということに対して、圧倒的に経験値が少ないため、どう対応すればいいか分からないから怖いという受講生もいました。この1ヶ月でいったいどの程度話せるようになるのだろうか、ひょっとして途中離脱する者も出てくるのだろうか。

ロールプレイングは、コンタクトセンターのトレーナーやスタッフのほか、支店での営業経験がある本社部門のスタッフがお客さま役を演じます。研修会場に設置された電話が一斉に鳴り、あちこちから「お電話ありがとうございます」と聞こえてきます。

「よろしかったですか、ではなく、よろしいですかと言いましょう」
「お名前ちょうだいできますか、は使わない。名前はあげたりもらったりするものではない」
「連絡先を聞いたら、必ず復唱して、メモもとって」

スタッフから受講生へ次々にアドバイスが入ります。研修のはじめの頃の受講生は、アドバイスを黙って聞くといった感じでした。おそらく、やらされている感があったのでしょう。

大きな変化が見られたのは、コンタクトセンターを見学した後です。

本当のお客さまを応対するオペレーターの通話を目の前でモニタリングしてから、受講生の大半の応対が変わりました。
多くの受講生がロールプレイング終了時のスタッフからのアドバイスをメモするようになり、相手にしっかり聞こえるように、自分の名前を名乗るようになったのです。「恐れ入りますが、お客さまのお名前を教えていただけますか」と、謝辞やクッション言葉を使って自然に話す受講生もいました。昨日までスクリプトをチラチラ見ながら話していたのに、です。
モニタリングで聞いたフレーズ(新人が使うとは思えない言葉選びで笑ってしまいそうなものもありましたが)を真似してロールプレイングで使ってみたり、休憩時間に「こういうときは○○と言うといいらしいよ」と話している姿を目にすることもありました。架空の題材でのロールプレイングの積み重ねだけでは、ここまで変えることはできなかったでしょう。

リモートでの研修が増え、大変効率的に受講できるようになりましたが、ホンモノ(実際の姿)を見て学び、五感で感じ、自分でやってみる、できなかったら質問する、またチャレンジする、これによりぐっと成長し、ホンモノに近づいていく・・・・ホンモノノチカラです。

<SMBC日興証券株式会社 東京コンタクトセンター 水谷美恵>