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[コン検通信 理事だより] カスハラとの向き合い方を再確認しましょう

近年さまざまな接客シーンでカスタマーハラスメント(カスハラ)が問題となっています。今回のコラムでは、カスハラへの対処法や、被害から従業員を守るために事前にできることを記します。
ご存じの事柄も多いと思いますが、今一度再確認いただけたら幸いです。

■カスハラとは
カスハラとは顧客から従業員に対して行われる嫌がらせ行為のことで、具体的には以下のような事例があります。

・従業員への暴力 ・土下座の強要 ・暴言 ・恐喝行為 ・大声で怒鳴る
・不当な金銭の要求 ・長時間、電話を切らせない

こうしたカスハラがさまざまな場所で起こってしまっているのが現実です。従業員にかかる負担は大きくなります。

■カスハラとクレームの違い
クレームは、顧客が事業者に対してサービスや商品の良くない点を指摘する行為を指します。一方、カスハラは顧客から従業員に対して理不尽な要求や脅迫などを行うものです。「不当または過剰な要求があるかどうか」が分かれ目です。

■カスハラはなぜ起こるのか
カスハラが起こってしまう要因は、過剰なサービスに慣れ、「サービスをしてもらって当然だ」、「クレームをいれるのは当然の権利だ」という意識から生まれます。さらに、カスハラをしている本人は、自分は良いことをしているという認識を持つため、カスハラ加害者にとって正しいのは自分であり、悪いのは事業者側だということになります。
カスハラの解決が難しいのには、こうした背景もあります。

■カスハラにはどのように対応する? 
対応の仕方については、以下の3つの対応法を念頭に置いてください。

①まずは相手の言うことを聞いてみる
大声で怒鳴っていたり、威圧的な態度をとっていたりする場合には、まず相手を落ち着かせる必要があります。そのため、反論や反発をせずまずは相手の話を聞いてみましょう。
このとき大事なのは「私はあなたの話を聞いていますよ」というアピールをすることです。うまくいけば話を聞いてもらえたことで満足し、カスハラが止まる可能性もあります。

②事業者としてできる範囲で、顧客の要望に沿うような対応をする
不快になったことに対して何かを要求しているケースでは、要求が通るまで納得しないという気持ちでいることも多いといえます。目先の要求だけでなく、相手が本質的に何を望んでいるかまで考慮し、今できる最善の策を考えましょう。

③カスハラが続くなら毅然とした態度で応対する
悪質なカスハラはれっきとした犯罪だということを念頭に置き、毅然とした態度で応対しましょう。カスハラの中には、警察へ通報したり法的措置をとったりすることでしか解決できないものもあります。

■カスハラの対応が遅れるとどうなる? 
カスハラをする顧客に対してあいまいな態度をとったり、理不尽な要求を呑んでしまったりすると、その顧客が「自分が正しい」という思いをより強めることにつながりかねません。しかし、従業員は立場上、思ったことをそのまま口にすることや激しく反論することができず、精神的に追い詰められてしまい、退職という選択をしてしまう方も珍しくありません。さらには、カスハラに対し適切な対応ができなければ、悪質な顧客への対応ができない企業だというレッテルを貼られかねません。
昨今SNSでの情報拡散も日常茶飯事となるため、今後の企業イメージやブランディングにもかかわる重大な問題だと捉えて対処しなければなりません。

■対応従業員へのアフターフォローも忘れずに
応対後の従業員に対するフォローも、カスハラ対応における最重要事項のひとつです。
カスハラを受けたことでトラウマになってしまい、その後の業務に支障が出ることも珍しくありません。本人や周囲が大丈夫だと思っていたとしても、心の傷は思わぬところで痛むことがあります。フォローは手厚すぎるくらいでちょうど良いのです。

■被害を未然に防ぐためにすべきこと
さて、最後にカスハラの被害を未然に防ぐためのポイントをご紹介します。
完全にカスハラをなくすことは難しいですが、カスハラの発生を抑止したり被害を最小限にとどめたりすることはできます。ぜひ、実践していただきたいと思います。

①対応マニュアルの作成と社員教育
近年さまざまな接客シーンで頻発するカスハラに対し、マニュアルの整備を進めている企業も増えてきました。事前にとるべき対応を決めておくことで、冷静に対処しやすくなります。また、マニュアルの整備に合わせ、従業員に対する教育を徹底することも必要不可欠です。
相手に対してかけるべき言葉や接し方などを、ロールプレイング等を通してシミュレーションしておくことをおすすめします。

②通話を録音できるようにし、必要に応じて法的措置をとる
カスハラの被害を立証したり、その後のカスハラ対策に活かしたりできるよう、通話を録音することは非常に有効です。特にコールセンターなど電話応対を頻繁に行う事業所では、通話開始時に録音システムの存在を告げることでもカスハラ抑止効果が狙えます。

しかし、いくら冷静に対応していても、どうにもならないカスハラがあるのも事実です。そのようなケースでは法的措置も選択肢に入ってきます。ご紹介した録音などと組み合わせて適切な措置をとりましょう。恫喝や嫌がらせ電話などは威力業務妨害に問うことができます。マニュアル作成時や社員教育の際、警察への通報をフローの一部として盛り込むことで、いざというときにもためらわず対応できるでしょう。

<株式会社JBMコンサルタント 佐藤 正樹>